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習慣流産

習慣流産と中国鍼灸 (通院困難な方は、漢方相談にも。院長のお勧め⇒)

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習慣流産について

流産癖の原因|流産癖【産婦人科疾患】

習慣流産とは、3回以上流産を繰り返した状態です。
習慣流産は不育症の大部分を占めます。
自然流産とは、妊娠24週までに人為的でない原因によって胎児が失われることをいいます。
流産はハイリスク妊娠で多くみられます。妊娠が認められた人の約15%が流産しています。実際にはこのほか、妊娠とわかる前に流産して気づかずにいるケースが相当数あると考えられています。流産のうち約85%は妊娠12週までに起こります。この時期に起こる流産のほとんどは、先天異常や遺伝病など胎児側の原因によるものと考えられています。
15%の流産は妊娠13〜24週に起こります。このうち約3分の1は原因不明ですが、残りの3分の2は母体側の原因によるものです。たとえば、子宮が2つに分かれている重複子宮や、子宮が大きくなるにつれて子宮口が開いてしまう子宮頸管無力症など、生殖器の構造的な異常が流産の原因となることがあります。またコカインの使用、外傷、ある種の病気なども流産の原因となります。甲状腺機能低下症、糖尿病、感染症(サイトメガロウイルス、風疹など)、結合組織疾患(全身性エリテマトーデスなど)といった病気が流産を引き起こすことがあります。Rh式血液型不適合(母体はRhマイナスで胎児はRhプラスの場合)も流産のリスクを高めます。情動的障害は流産と関係ありません。

中国鍼灸院の新聞の紹介記事

習慣流産の原因|習慣流産【婦人科疾患】

『週刊文春』
 出版社:株式会社文藝春秋
『週刊実話』
 出版社:日本ジャーナル出版
『アサヒ芸能』
 出版社:徳間書店
『週刊大衆』
 出版社:双葉社
『難病、慢性疾患に最適ー欧米でも高まる評価 』『 西洋医学と東洋医学を結ぶ中国人医師の挑戦』
習慣流産の原因|習慣流産【婦人疾患】

習慣流産と西洋医学

流産の種類と原因

流産の中には医学的にはさまざまな種類があり、大きく分けると妊娠24週以前に起こる自然流産と、医学的に妊娠を終わらせる人工流産(中絶)があります。妊娠24週以降に、死亡している胎児を分娩した場合は死産といいます。このほか以下のような用語があります。

治療的中絶(人工妊娠中絶)
剤や手術などの医学的処置により起こす流産。
切迫流産
娠24週までに出血や下腹部痛があり、胎児が失われる可能性がある状態。
進行流産
腹部痛や出血があり、子宮口が開いた状態で、胎児が失われると予測される状態。
完全流産
児と胎盤のすべてが子宮外へ排出された状態。
不完全流産
宮内容物の一部が子宮外に排出された状態。
習慣性流産
然流産を3回以上連続して繰り返している状態。
稽留(けいりゅう)流産
亡した胎児が4週間以上子宮内にとどまっている状態。
感染流産
産前、流産中、流産後のいずれかに子宮内容物が感染を起こした状態。

過去に流産や早産の経験がある人は、流産しやすい傾向があります。12週までの妊娠初期に3回続けて流産した人では、次に流産する確率は約4分の1です。流産を繰り返している人は、次の妊娠をする前に、遺伝子異常や生殖器の構造的な異常、流産しやすい病気などがないか調べた方がよいかもしれません。構造的な異常を調べるには子宮鏡検査、子宮卵管造影、超音波検査などの画像検査が行われます。過去の流産の原因がわかった場合は、可能であればその原因を治療します。

習慣流産の症状

流産の前には普通、少量またはかなりの出血と腟からのおりものがみられます。子宮が収縮してけいれん性の痛みが起こります。妊婦のおよそ20〜30%が妊娠20週までに少なくとも1回は出血やけいれん性の痛みを経験しますが、そのうちおよそ半数が流産に至ります。
妊娠初期の流産では、腟からの少量の出血以外には特に徴候がみられないこともあります。これに対し、妊娠後期の流産では大量に出血することがあり、その血液に粘膜や血のかたまりが含まれていることもあります。けいれん性の痛みが徐々に激しくなり、最終的に子宮が強く収縮して胎児と胎盤が排出されます。ときに、胎児が子宮内で死亡していても流産が起こらないことがあります。このような場合は子宮が大きくなりません。まれに、流産の前か後、あるいは流産と同時に子宮内の死んだ組織に感染が起こることがあります。こうした感染症はときに重症化し、発熱、悪寒、心拍数の上昇などを引き起こします。妊婦が意識障害を起こしたり、血圧が急激に下がることもあります。

習慣流産の検査と診断

妊娠20週までに出血やけいれん性の痛みがある場合は、診察を受けて流産の可能性がないかを確認します。医師はこのとき、子宮頸部が開いていないかをチェックします。子宮口が開いていなければそのまま妊娠が継続できますが、開いていれば流産する可能性が高くなります。超音波検査も行われます。超音波検査では、流産がすでに起きているかどうか、また胎児が生存しているかどうかを調べます。流産が起きている場合は、胎児と胎盤が排出されているかどうかが超音波の画像からわかります。胎児は生存しているが流産しそうな場合は、出血や腹痛がなくなるまでベッド上で安静を保ちます。できれば仕事は休み、家で休養を取ります。性交は、流産との関係は明らかになっていませんが、控えた方がよいでしょう。流産が起こって胎児と胎盤が排出されてしまった場合、治療は特に必要ありません。しかし、これらの組織の一部が子宮内に残っている場合は吸引掻爬術によって完全に除去します。

習慣流産の西洋医学治療

  1. 自己免疫異常、血液凝固異常による不育症:薬物療法
  2. 子宮形態異常による不育症:子宮形成術
  3. 同種免疫異常による不育症:夫リンパ球免疫療法

妊娠中に生じる危険因子

妊娠中に、妊娠のリスクを高めるような問題や症状が起こることがあります。先天異常を生じる性質を催奇形性といい、たとえば放射線の照射や、一部の化学物質、薬物、感染症などがさまざまな先天異常を引き起こすことがあります。また、妊娠中に病気にかかることもあります。病気の中には、妊娠に関連して起こるもの(妊娠合併症)もあります。
薬物の中には、妊娠中に服用すると胎児の先天異常を引き起こすものがあります。たとえばアルコール、イソトレチノイン、一部の抗けいれん薬、リチウム、一部の抗生物質(ストレプトマイシン、カナマイシン、テトラサイクリンなど)、サリドマイド、ワルファリン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(妊娠中期以降の25週以降に使用した場合)などです。葉酸が欠乏すると胎児に先天異常が生じるリスクが高くなるため、免疫抑制薬のメトトレキサートや抗生物質のトリメトプリムなど、葉酸の作用を阻害する薬も胎児の先天異常の原因となります。コカインの使用は先天異常、胎盤早期剥離、早産の原因になります。喫煙は低体重児を出産するリスクを高めます。医師は妊娠初期に必ず、これらの薬物を使用しているかどうかを尋ねます。中でも特に注意が必要なのはアルコール、コカイン、喫煙です。

妊娠中に発症する病気

妊娠中、妊娠とは直接関係ない病気にかかることがあります。病気によっては母体や胎児に問題が起こるリスクが高くなります。たとえば高熱が出る病気、感染症、開腹手術が必要な病気などです。また妊娠に伴う母体のさまざまな変化によって、発症しやすくなる病気もあります。たとえば血栓塞栓症、貧血、尿路感染症などです。

発熱
妊娠初期(12週まで)に39.5℃以上の発熱を起こすと、流産したり、脳や脊髄に障害のある子供が生まれるリスクが高くなります。妊娠後期の発熱は早産のリスクを高めます。
感染症
感染症の中には、妊娠中にかかると胎児の先天異常の原因となるものがあります。風疹は心臓や内耳などの先天異常を引き起こすことがあります。サイトメガロウイルスによる感染症では、ウイルスが胎盤を通過して胎児の肝臓や脳に障害を及ぼすことがあります。ウイルス感染症ではこのほか、単純ヘルペスや水ぼうそう(水痘)なども胎児への悪影響や先天異常を引き起こすことがあります。原虫感染症のトキソプラズマ症は流産、胎児の死亡、重度の先天異常の原因となります。細菌感染症のリステリア症も胎児に悪影響を及ぼすことがあります。妊娠中に腟の細菌感染症(細菌性腟炎など)を起こすと早産や早期破水につながることがあります。抗生物質の投与によりこうした問題の発生率を下げられることがあります。
開腹手術が必要な病気
妊娠中に、腹部の緊急手術を要するような病気にかかることがあります。開腹手術は早産のリスクを高め、特に妊娠初期では流産を引き起こすことがあります。このため母体の健康に長期的な問題がない限り、手術はできるだけ遅らせます。
妊娠中に虫垂炎になった場合は、虫垂が破裂すると生命にかかわることがあるため、手術で早急に虫垂を取り除きます(虫垂切除術)。虫垂切除術が胎児に影響したり、流産を引き起こしたりすることはまずありません。妊娠中にはむしろ、虫垂炎が起きているのに気づきにくいことが問題となります。虫垂炎によるけいれん性の痛みは、妊娠中によくみられる子宮収縮に伴う痛みと似ています。また、妊娠して子宮が大きくなっていくと虫垂の位置が上に移動するため、虫垂炎で痛む場所が通常とは異なることがあり、この病気に気づきにくくなります。
卵巣嚢胞があって妊娠してもなくならない場合、手術は妊娠12週以降まで待ちます。嚢胞は妊娠を維持するホルモンを分泌している場合があり、放っておいてもいずれ消失することが少なくないからです。ただし嚢胞が大きくなったり別の腫瘤(しゅりゅう)が生じてきた場合は、癌が疑われるため、12週以前でも手術が必要となることがあります。
妊娠中に腸閉塞が起こると非常に危険です。腸閉塞がもとで腸管の壊疽(えそ)や腹膜炎(腹腔を覆っている膜の炎症)が生じると流産の可能性があり、母体の生命も危険にさらされます。妊婦に腸閉塞の症状がある場合、特に腹部の手術や感染症の既往がある人の場合は、ただちに試験開腹(治療が遅れると生命にかかわるような場合に診断が確定していなくても開腹手術を実施すること)が行われます。
血栓塞栓症
米国では、血栓塞栓症は妊婦の死亡原因として最も多くみられます。これは血管の中に血のかたまり(血栓)ができる病気です。血栓は血流に乗って動脈を詰まらせることがあり、この状態を塞栓といいます。血栓塞栓症を発症するリスクは出産後6〜8週間は高くなります。血栓による合併症の多くは分娩時の外傷によって起こります。このリスクは経腟分娩よりも帝王切開の方が大幅に高くなります。
血栓ができる場所は主として下肢の表在静脈(血栓性静脈炎)と下肢の深部静脈(深部静脈血栓症)です。症状はふくらはぎの腫れや痛み、圧痛です。症状の重さはこの病気の重症度とは関係がありません。血栓は下肢から肺へ移動し、肺の動脈を詰まらせてしまうことがあります。これを肺塞栓症といい、生命にかかわることがあります。脳に血液を供給する動脈に血栓が詰まると、脳卒中を起こします。骨盤内に血栓が生じることもあります。
前回の妊娠中に血栓が生じた人は、次回の妊娠では予防のため抗凝固薬のヘパリンを投与されることがあります。血栓が疑われる症状が現れた場合はドップラー超音波検査を行い、血栓が見つかればただちにヘパリンの投与を開始します。ヘパリンは注射で静脈内または皮下に投与されます。ヘパリンは胎盤を通過しないので胎児に影響はありません。血栓が生じるリスクが高い場合は出産後6〜8週間まで治療を続けます。出産後はヘパリンの代わりにワルファリンが投与されることもあります。ワルファリンは経口投与が可能で、ヘパリンと比べて合併症のリスクが低く、授乳中の人でも服用できます。
肺塞栓症が疑われる場合は、肺換気/血流スキャンを行って診断を確定します。これは微量の放射性物質を静脈内に注射して肺の血流分布を調べる検査です。使用する放射性物質の量はごくわずかなので妊娠中でも問題ありません。それでも診断がつかない場合は肺動脈造影検査を行います。
貧血
妊娠中は鉄分が不足するため、程度の差はありますが多くの妊婦が貧血になります。胎児の赤血球をつくり出すにも鉄分が必要となるため、妊娠中には鉄分の必要量が倍増します。葉酸が不足しても貧血になります。貧血の予防または治療として、通常は鉄分と葉酸を補給します。しかし貧血が重症の場合や長く続く場合は、血液が運ぶ酸素の量が減少します。その結果、胎児は正常な成長と発達に必要な酸素の供給が受けられなくなり、特に脳の発達に支障を来します。重度の貧血がある妊婦には、極度の疲労感や息切れが生じたり、頭がクラクラするなどの症状が現れます。また、早産のリスクが高くなります。分娩時に普通にみられる程度の出血量でも、このような人では危険な状態に陥ることがあります。また、貧血があると出産後に感染症を起こしやすくなります。葉酸が不足している場合は、胎児に二分脊椎(にぶんせきつい)など脳や脊髄の先天異常が生じるリスクも高くなります。
尿路感染症
尿路感染症は妊娠中によくみられます。これは大きくなった子宮によって腎臓と膀胱(ぼうこう)を結ぶ管(尿管)が圧迫されて、尿の流れが悪くなるためだと考えられています。尿の流れが悪くなると尿管の細菌が洗い流されず、感染症を起こすリスクが高くなります。尿路感染症は早産や早期破水のリスクを高めます。ときに膀胱や尿管の感染症が尿路をさかのぼって腎臓に達し、腎臓の感染症を起こすことがあります。治療には抗生物質が使用されます。

妊娠合併症

妊娠合併症は、妊娠中に特有の健康上の問題です。母体に影響するものもあれば、胎児に影響するもの、あるいは母子ともに影響するものもあり、問題が起こる時期もさまざまです。たとえば前置胎盤(胎盤の位置の異常)や胎盤早期剥離などの合併症があると、妊娠後期の3カ月に腟から出血することがあります。この時期に出血すると胎児が死亡したり、分娩中に母体が大出血を起こしたり、死に至るなどの危険があります。しかしほとんどの妊娠合併症は治療によって改善します。

子宮外妊娠

正常な妊娠では、卵子は卵管内で受精して子宮内膜に着床します。しかし卵管が狭くなったりふさがったりしていると、受精卵の移動が遅くなったり妨げられたりします。中には子宮にたどり着けない受精卵が、子宮以外の場所にとどまってしまうことがあり、これを子宮外妊娠といいます。子宮外妊娠は主に左右どちらかの卵管に起こりますが(卵管妊娠)、卵管以外の場所に起こることもあります。こうして子宮以外の場所に着床した胎児は、生存することができません。子宮外妊娠は妊娠100〜200件に1件の割合で起こります。危険因子としては、

  1. 卵管の病気
  2. 骨盤内炎症性疾患
  3. 過去の子宮外妊娠
  4. 母親が胎児のときジエチルスチルベステロールの影響を受けた
  5. 卵管の避妊手術を受けたが成功しなかった、あるいは再手術で卵管を元に戻した場合

などがあります。

子宮外妊娠では、不正性器出血や腹部のけいれん性の痛みといった症状がみられます。胎児の成長により周囲の構造が破れることもあります。妊娠6〜8週以降では卵管が破裂して下腹部に激痛が生じ、失神する場合もあります。さらに遅い時期(妊娠12〜16週以降)に卵管破裂を起こすと、胎児と胎盤が大きくなっているため大量に出血し、母体が死亡する危険が高くなります。

妊娠しているかどうかがわからない場合は妊娠検査をします。妊娠していれば超音波検査で胎児の位置を確かめます。子宮内に胎児が見つからなければ子宮外妊娠が疑われます。超音波検査で子宮以外の部位に胎児が認められれば診断が確定します。へその下を小さく切開して管状の観察装置(腹腔鏡)を挿入し、直接観察することもあります。

子宮外妊娠は生命の危険を伴うため、できるだけ早く胎児と胎盤を除去する必要があります。通常は腹腔鏡を使って除去しますが、場合によっては開腹手術が必要になります。まれに、損傷がひどいため子宮を摘出しなければならないこともあります。手術の代わりにメトトレキサートを1回注射することもあります。この薬によって子宮外妊娠の組織は死滅し、自然吸収されます。ときにメトトレキサートと手術の併用が必要となる場合もあります。

妊娠中のホルモン変化によって起こる問題の中には、症状が軽く一時的なものもあります。たとえば妊娠によるホルモンの影響で、胆道を通る胆汁の流れが悪くなることがあります。これを妊娠性胆汁うっ滞といいます。主な症状は全身のかゆみで、普通は妊娠後期に生じます。発疹はありません。かゆみが強い場合には、コレスチラミンが投与されます。胆汁うっ滞は、普通は出産後に解消されますが、次回以降の妊娠で再発する傾向があります。

妊娠悪阻
妊娠中に非常に激しい吐き気や嘔吐がみられる場合を、普通のいわゆる「つわり」と区別して妊娠悪阻(にんしんおそ)といいます。頻繁に嘔吐があり、吐き気が激しいため体重減少や脱水を起こす場合がこれに該当します。嘔吐があっても体重が増加していて脱水もない場合は、妊娠悪阻ではありません。妊娠悪阻の原因は不明です。
妊娠悪阻は母体にも胎児にも生命にかかわる状態で、入院治療が必要です。静脈から水分、ブドウ糖、電解質、ときにビタミンなどを投与します。最低24時間は飲食が禁止されます。必要に応じて鎮静薬や制吐薬などの薬も投与されます。脱水症状から回復して嘔吐が治まれば、刺激の少ない食べものを少量ずつ何回にも分けて食べはじめることができます。様子をみながら、可能な範囲で1回の食事の量を増やしていきます。嘔吐は通常、2〜3日で治まります。症状が再発する場合は同様の治療を繰り返します。まれに、治療を行っても体重減少が止まらず症状が続くことがあります。このような場合は症状が治まるまで、鼻から小腸に入れたチューブで直接栄養を送りこみます。
妊娠中毒症(子癇前症)
妊娠中毒症は妊婦のおよそ5%にみられます。主な症状は血圧上昇とタンパク尿です。妊娠中毒症は普通、妊娠20週から産後1週間の間に発症します。原因は不明ですが、初産婦、多胎妊娠、前回の妊娠で妊娠中毒症があった人、もともと高血圧や血管の病気がある人、鎌状赤血球症の人によくみられます。妊婦の年齢が15歳以下または35歳以上の場合も妊娠中毒症になりやすい傾向があります。

妊娠中毒症に関連する重症疾患にHELLP症候群と呼ばれるものがあり、以下のような状態を伴います。
  • 溶血(赤血球が壊れること)。
  • 血液中の肝酵素値の上昇(肝機能の異常を示す徴候)。
  • 血小板の減少(血液が固まりにくくなり、分娩中や分娩後に出血するリスクが高くなる)。
妊娠中毒症の200人に1人は血圧が非常に高くなってけいれん発作を起こします。この状態を子癇(しかん)といいます。子癇のうち4分の1は出産後2〜4日目に起こります。ただちに適切な処置をしなければ、子癇は生命にかかわります。 妊娠中毒症は、胎盤早期剥離(胎盤が通常より早い時期に子宮からはがれてしまうこと)の原因となります。妊娠中毒症の女性から生まれた新生児では、出生直後に問題が起こる可能性は通常と比べて4〜5倍高くなります。胎盤の機能不全や早産などが原因で、胎児が正常より小さい場合があります。
妊娠初期の軽度な妊娠中毒症は自宅のベッド上で安静にしていれば十分なこともありますが、医師の診察は頻繁に受けるようにします。妊娠中毒症が悪化した場合は入院が必要になります。ベッドで安静にし、胎児が成長し生まれても安全な段階になるまで注意深く経過を観察します。降圧薬が投与されることもあります。出産の数時間前には、けいれん発作のリスクを低下させるため硫酸マグネシウムを静脈投与する場合もあります。出産予定日近くに発症した場合は、普通、陣痛を誘発して出産に及びます。
重度の妊娠中毒症で、すぐに経腟分娩できるほどには子宮頸部(子宮口)が開いていない場合は、帝王切開で出産することもあります。帝王切開は最も短時間で済む出産方法で、出産時間が短ければ母子に合併症が生じるリスクが低くなるからです。血圧が高い場合は、分娩前にヒドララジンやラベタロールなどの降圧薬を静脈投与することもあります。HELLP症候群の治療も重症妊娠中毒症とほぼ同様です。
妊娠中毒症や子癇を起こした人は出産後にけいれん発作を起こすリスクが高いため、出産後2〜4日間は注意深く経過を観察します。全身状態が良くなってきたら、自力で歩くことを勧められます。妊娠中毒症とその合併症の程度にもよりますが、出産後数日間は入院します。退院後は必要があれば降圧薬を服用し、出産後2〜3カ月は少なくとも2週間に1回、医師の診察を受けます。出産後6〜8週間は血圧の高い状態が続くこともあります。高血圧がそれ以上長く続く場合は、妊娠中毒症が原因ではない可能性があります。
妊娠糖尿病
妊婦のおよそ1〜3%が妊娠中に糖尿病を発症します。これを妊娠糖尿病といいます。糖尿病の発症に気づかず治療を行わずにいると、母子ともに健康上の問題が生じるリスクが高くなります。胎児が死亡するおそれもあります。妊娠糖尿病は、肥満した女性や特定の民族(特にアメリカ先住民、太平洋諸島系、メキシコ系、インド系、アジア系)の女性に多くみられる傾向があります。
妊娠後期は体内のインスリン需要が増大しますが、それに見合う量のインスリンが産生されないと糖尿病になります。妊娠糖尿病を発症するほとんどの人はこれが原因です。インスリン需要が増大するのは、妊娠に伴って血糖値が高くなるのでこれをコントロールするためです。以前から糖尿病があり、妊娠して初めて気づく人もいます。
妊娠糖尿病の検査方針は医師によって異なり、すべての妊婦にスクリーニング検査を行う医師もいれば、肥満や民族的背景といった危険因子がある人にのみ行う医師もいます。血糖値は採血して調べます。妊娠糖尿病の人は、自宅で使用できる測定装置を使って血糖値の自己測定をするように指導されます。
治療には糖分の多い食品を控え、体重が増えすぎないように管理をします。それでも血糖値が高い場合はインスリンが投与されます。妊娠糖尿病は通常は出産後に解消されますが、妊娠糖尿病を発症した人の多くは高齢になって2型糖尿病を発症します。
Rh式血液型不適合
Rh式血液型不適合は、母体の血液型がRhマイナスで、胎児の血液型は父親からの遺伝でRhプラスである場合に起こります。米国の夫婦のうち約13%は夫がRhプラスで妻がRhマイナスです。
Rh因子とは赤血球膜上にみられる分子です。赤血球にRh因子があれば血液型はRhプラス、なければRhマイナスとなります。胎児のRhプラスの血液が母体に入ると、母体の免疫システムが胎児の赤血球を異物とみなし、Rh抗体と呼ばれる抗体をつくって胎児の赤血球を壊します。このように抗体が産生されることをRh感作といいます。
分娩時を除けば、妊娠中に胎児の血液が母体の血流中に多量に入ることはまずありません。このため初回の妊娠でRh感作は通常は起こらず、胎児や新生児に問題が起こることはまずありません。しかし、ひとたび母体が感作されると、Rhプラスの胎児を妊娠するたびに問題が生じる可能性が高くなります。妊娠回数を重ねるごとに、母体ではより早い時期に、より多くのRh抗体がつくられるようになるからです。
Rh抗体が胎盤を通過して胎児に移行すると、胎児の赤血球が破壊されることがあります。この破壊速度が、胎児の体内で赤血球が新たにつくられる速度を上回ると、胎児は貧血になります。このような状態を胎児または新生児の溶血性疾患(胎児赤芽球症、新生児赤芽球症)といいます。重症になると胎児が死亡します。
初回の妊婦検診で、妊婦のRh式血液型を調べるための血液検査が行われます。Rhマイナスだった場合は、Rh抗体の有無と、父親の血液型も調べます。父親がRhプラスであればRh感作が生じるリスクがあります。このような場合は妊娠期間中は定期的に血液検査を行い、Rh抗体の有無をチェックします。抗体が検出されなければ妊娠を正常に継続できます。
抗体が検出された場合は胎児を守るための措置が取られます。その内容は抗体の量によって異なります。抗体価が非常に高い場合は羊水穿刺を行います。これは体の外から針を刺して羊膜内の液体(羊水)を採取する検査です。羊水中のビリルビン(赤血球が壊れたときにできる黄色い色素)を測定し、値が高ければ胎児に輸血をします。胎児が十分に成長するまで輸血を繰り返し、母体の外でも安全に生きられる段階まで成長したら、陣痛を誘発します。出生後もしばらく輸血が必要な場合があります。一方、出生後までは輸血が必要ないケースもあります。
Rhマイナスの女性には予防策として、妊娠28週と、Rhプラスの胎児を出産後72時間以内にRh抗体が注射されます。この方法は胎児を流産または中絶した場合にも行われます。注射する抗体としてはRho(D)免疫グロブリン(抗D免疫グロブリン)を使用します。母体の血流中にもしも胎児の赤血球が入っていても、注射した抗体によって破壊されます。こうして母体での抗体の産生を防ぎ、次回以降の妊娠で問題が起こらないようにするのがこの治療の目的です。
妊娠中の脂肪肝
妊娠末期に起こるまれな病気で急性妊娠性脂肪肝ともいい、その原因は不明です。吐き気、嘔吐、腹部の不快感、黄疸(おうだん)などの症状がみられます。急速に悪化して肝不全を起こすことがあります。肝機能検査の結果に基づいて診断され、診断の確定に肝生検が必要となる場合もあります。脂肪肝が発見された場合は、ただちに妊娠の継続を断念するよう勧められることがあります。妊娠中の脂肪肝は母子ともに死亡するリスクが高い病気ですが、生き延びた場合は完治します。通常は、次回の妊娠で脂肪肝が再発することはありません。
産褥性心筋症
妊娠後期または産後に心筋が障害されることがあり、産褥(さんじょく)性心筋症と呼ばれます。原因は不明です。この病気は、妊娠や出産の経験が複数回ある人、年齢の高い人、多胎妊娠の人、妊娠中毒症がある人に起こる傾向があります。産後も心機能が回復しないケースもあります。こうした人は次回の妊娠でも産褥性心筋症を起こすことがあるため、以後は妊娠を避けるべきです。産褥性心筋症が原因で心不全(心不全を参照)を起こした場合は治療が必要です。
羊水に生じる問題
胎児を包む羊膜内の羊水の量が異常に多くなることがあり、羊水過多と呼ばれます。羊水過多になると子宮が大きくなって横隔膜が上に押し上げられるため、重度の呼吸障害や早産を起こしやすくなります。
羊水過多は多胎妊娠の場合や、糖尿病、胎児血に対するRh抗体産生などがある妊婦によくみられます。食道閉塞や脳・脊髄の異常(二分脊椎など)といった、胎児の先天異常も羊水過多の原因となります。約半数は原因不明です。
羊水の量が少ない羊水過少もさまざまな問題を引き起こします。羊水の量が極端に少ないと胎児の肺が十分に発達せず、胎児自体も圧迫されるため奇形を生じます。この状態をポッター症候群といいます。
羊水過少は、胎児に尿路の先天異常や発育不良がある場合、胎児が死亡している場合などによくみられます。また、妊娠中期から後期(13週以降)にエナラプリルやカプトプリルといったアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を使用した場合も羊水過少となることがあります。このため妊娠中にこれらの薬を使うのは、重度の心不全や高血圧の治療にどうしても必要な場合のみに限られます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も、妊娠後期に用いると羊水過少の原因となります。
前置胎盤
胎盤は普通は子宮の上部に形成されますが、ときに子宮の下の方に位置する子宮頸部(子宮口)上やその近くにできることがあります。これを前置胎盤といい、胎盤が完全に子宮口をふさいでいるものから一部だけふさいでいるものまであります。前置胎盤は約200回の出産に1回の割合で起こり、経産婦や、子宮筋腫など子宮の異常がある人に起こりやすい傾向があります。
前置胎盤があると、妊娠後期に突然腟から出血することがあります。痛みはなく、鮮紅色の血液がみられます。ときに大量出血を起こし、母子ともに危険な状態になります。
前置胎盤の発見や、胎盤早期剥離との判別には超音波検査が役立ちます。
出血が激しい場合、特に胎盤が子宮口を完全にふさいでいる場合は、出産まで入院します。繰り返し輸血が必要となる場合もあります。出血が少量で分娩まで時間がある場合は、入院してベッド上で安静を保つことを勧められます。出血が止まれば歩くこともできます。再出血がなく、必要ならすぐに来院できる状態であれば、通常は退院します。ほとんどのケースでは陣痛が始まる前に帝王切開で分娩が行われます。前置胎盤では、陣痛が始まると胎盤がごく早い時期にはがれてしまい、胎児に酸素が送られなくなるからです。酸素が不足すると脳障害などさまざまな問題が胎児に生じる可能性があります。
胎盤早期剥離
子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、胎児が生まれる前にはがれてしまうことで、常位胎盤早期剥離ともいいます。胎盤の一部がはがれることもあれば(10〜20%程度の剥離など)、完全にはがれてしまうこともあります。原因は不明で、全出産の0.4〜3.5%に起こります。胎盤早期剥離は高血圧のある妊婦(妊娠中毒症の場合も含む)や、コカインを使用している妊婦に多くみられます。
胎盤がはがれるとその部分の子宮壁から出血し、子宮口を通って腟からの出血となったり、胎盤の裏側にたまって内出血を起こします。症状は剥離の程度と出血量によって異なり、大量出血となることもあります。自覚症状は突然の腹痛で、持続性の痛みもあればけいれん性の痛みの場合もあります。腹部を押すと圧痛がみられたり、ショック状態に陥ることもあります。血管内で広範囲に血液凝固が起こる播種(はしゅ)性血管内凝固症候群、腎不全、子宮壁内への出血を起こすこともあり、特に妊娠中毒症の人ではこうした状態になるおそれがあります。胎盤がはがれると胎児への酸素と栄養の供給が少なくなります。

妊娠前の危険因子

危険因子の中には妊娠前から存在するものもあります。たとえば、その女性の身体的な特性や社会的な特性、過去の妊娠中に生じた問題、現在かかっている病気などです。

身体的な特性:女性の年齢、体重、身長は妊娠中のリスクに大きく影響します。15歳以下の若年者が妊娠すると、妊娠中毒症(子癇[しかん]前症ともいい、妊娠中に生じる高血圧の1種)を起こすリスクが高くなります。若年者の妊娠では低体重児(在胎週数の割に小さい胎児)や低栄養児を出産するリスクも高くなります。35歳以上の女性が妊娠すると高血圧、妊娠糖尿病(妊娠期間中に発症する糖尿病)、分娩(ぶんべん)時の合併症などが起こるリスクが高くなります。

体重が45キログラム未満の女性が妊娠すると、低体重児を出産するリスクが高くなります。逆に肥満の女性では胎児が大きくなりやすく、難産につながります。肥満の女性は妊娠糖尿病や妊娠中毒症も発症しやすい傾向にあります。

身長が150センチメートル未満の女性は骨盤が小さいことが多く、分娩時に胎児が産道を通りにくい場合があります。たとえば胎児の肩が恥骨に引っかかることがあり、肩甲難産と呼ばれています。身長の低い女性では早産や胎児の発育不良も起こりやすい傾向があります。

生殖器の構造に異常があると、流産のリスクが高くなります。たとえば、子宮が2つある場合(重複子宮)や、子宮頸管無力症といって子宮頸部の力が弱く、胎児が成長するにつれて子宮口が開いてしまうといった場合などがあります。

社会的な特性:未婚女性や低所得者層の女性では妊娠中に問題が生じるリスクが高くなります。こうした特性がハイリスク妊娠につながる理由は明らかになっていませんが、これらの女性によくみられる他の特性に関係があると考えられています。たとえばこうした女性には、喫煙率が高い、食生活が不健康である、適切な医療を受けていないといった傾向がみられます。

過去の妊娠での問題
過去の妊娠で問題があった女性では、次回以降の妊娠でも問題が起こる可能性が高く、多くの場合は前回と同じ問題が生じます。たとえば未熟児、低体重児、4500グラムを超える超巨大児、先天異常児、流産、過期産(妊娠42週以降の出産)、胎児輸血を必要とするRh式血液型不適合、帝王切開を必要とする分娩などがあります。過去に生後まもなく新生児が死亡したことがあると、次回以降の出産でも問題が生じる可能性が高くなります。
病気が原因で、妊娠に際して同じ問題が何度も起こる場合もあります。たとえば糖尿病の女性では4500グラム以上の超巨大児を出産する可能性が高くなります。
遺伝病や先天異常のある子供を過去に出産したことのある女性では、次回以降の妊娠でも同様の問題が生じる可能性が高いとみられます。次の妊娠を試みる前に、子供(死産の場合も含めて)と両親の遺伝子検査を受けることも検討するとよいでしょう。こうした女性が再度妊娠した場合は、超音波検査、絨毛(じゅうもう)検査、羊水穿刺(せんし)などによって胎児の遺伝病や先天異常の有無がわかることがあります。
妊娠を6回以上経験している女性では、分娩時間が非常に短くなり出産後に大出血を起こすリスクが高くなります。また、胎盤の位置の異常(前置胎盤)が生じるリスクも高くなります。
妊娠前からの病気
妊娠する前からある病気が、妊娠に問題が生じるリスクを高めてしまう場合もあります。妊娠のリスクに影響しうる病気がある女性は、医師に相談して妊娠前からできるだけ体調を整えておくようにします。妊娠後は、専門のチームによる診療が必要になることもあります。こうしたチームは産科医、その病気の専門医(産科医が両者を兼ねる場合もあります)、栄養士などその他の医療専門職種といった複数の専門家で構成されます。
心臓の病気
心臓弁疾患(僧帽弁逸脱など)や先天性心疾患といった心臓の病気があっても、ほとんどの女性は心機能や寿命に永続的な悪影響を及ぼすことなく、安全に健康な子供を出産できます。ただし、妊娠前に心不全を起こしたことがある場合は、問題が生じるリスクがかなり高くなります。
妊娠中は心臓にかなりの負荷がかかります。このため以前からあった心臓の病気が悪化したり、新たに心臓の問題が生じて、それまでなかった症状が初めて起こることがあります。母体または胎児の死亡など重大な問題が生じるのは主に、妊娠前から重い心疾患があった場合に限られます。妊娠前から重い心疾患がある女性のうち、妊娠によって死に至るのはおよそ1%で、その多くが心不全によるものです。
妊娠期間が長くなるにつれて心臓の負担も増すため、問題が生じるリスクも高くなります。心疾患のある妊婦は極端に疲れやすくなったり日常の活動に制約が生じたりすることがあります。重度の心疾患がある女性では、妊娠初期に中絶を勧められるケースもまれにあります。リスクは分娩時にも高くなります。心疾患の種類にもよりますが、重度の心疾患がある女性では出産後も少なくとも半年以上は予断を許さない状態となることもあります。
妊婦の心疾患は胎児にも影響を及ぼす可能性があります。たとえば、胎児が未熟児で生まれることがあります。先天性心疾患のある女性では、胎児にも同様の先天異常が生じやすい傾向があります。こうした異常は超音波検査で出生前に発見できることがあります。重度の心疾患がある女性では、妊娠中に母体の状態が急変すると胎児が死亡することがあります。
重度の心疾患がある女性の分娩時には、硬膜外麻酔で腰椎の感覚を麻痺(まひ)させて「いきみ」を防止することがあります。分娩中にいきむと心臓へ戻る血液量が増加するため、心臓に負荷がかかるからです。この分娩法ではいきむことができないため、胎児の頭を鉗子(かんし)という器具で狭んで引き出す鉗子分娩を行うことがあります。
心疾患の種類によっては、母親が死亡するリスクが高いために妊娠が勧められないケースがあります。たとえば原発性肺高血圧症、アイゼンメンゲル症候群などがあります。こうした疾患のある女性が妊娠した場合は、できるだけ早期に妊娠の継続を断念するよう勧められます。
高血圧
高血圧(慢性高血圧)の女性は、妊娠中に重大な問題が起こるリスクが高くなります。妊娠中毒症(子癇前症ともいい、妊娠中に生じる高血圧の1種、高血圧の悪化、胎児の発育不良、胎盤早期剥離(胎盤が通常より早い時期に子宮からはがれてしまうこと)、死産などが起こることがあります。
中等度の高血圧(140/90〜150/100mmHg)に対しては、普通は降圧薬による治療は勧められません。このような薬を使用しても、妊娠中毒症、胎盤早期剥離、死産のリスクが低下したり、胎児の発育が改善されることはあまりありません。ただし、妊娠によって入院が必要なほど血圧が上昇するおそれがある場合は、降圧薬が使用されることがあります。
血圧が150/100mmHgよりも高い場合は、降圧薬による治療を受けることが勧められます。治療によって、重度の高血圧により脳卒中などの合併症を起こすリスクが低下します。高血圧と腎臓病が両方ある場合には、高血圧をうまくコントロールできないと腎臓の障害がさらに進むおそれがあるので、治療が勧められます。
高血圧の治療に使われる降圧薬の多くは、妊娠中に使用しても問題ありません。ただしアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は妊娠中、特に妊娠中期以降(13週以降)は使用を中止します。ACE阻害薬は胎児の腎臓に重大な障害を及ぼす可能性があり、出生後まもなく死亡することもあるからです。
高血圧の女性の妊娠中には、血圧のコントロール状況、腎機能、胎児の発育の経過を注意深く観察します。ただし、胎盤早期剥離については予防や予測ができません。多くの場合、死産や高血圧の合併症(脳卒中など)を防ぐために早期の分娩が必要となります。
貧血
鎌状赤血球症、ヘモグロビンSC病、一部のサラセミアといった遺伝性貧血がある場合は、妊娠中に問題が生じるリスクが高くなります。人種、民族的背景、家族歴などからこのような血液疾患を発症するリスクが高い女性では、ヘモグロビンに異常がないか調べるため出産前に血液検査が行われます。胎児のヘモグロビン異常を調べるため絨毛検査や羊水穿刺を行う場合もあります。
鎌状赤血球症がある人は、妊娠中に感染症を起こすリスクがきわめて高くなります。特に多いのは肺炎、尿路感染症、子宮の感染症です。鎌状赤血球症の妊婦の約3分の1では妊娠中に高血圧がみられます。妊娠中に限りませんが、鎌状赤血球クリーゼといって、突然激しい痛みに襲われる発作が起こることがあります。心不全や肺塞栓症(血液のかたまりによって肺動脈が詰まる病気)など、生命にかかわる症状を起こすこともあります。分娩中や出産後の出血が多量となる場合もあります。胎児の発育は遅く、在胎週数の割に大きくならないことがあり、死亡することもあります。妊娠前の鎌状赤血球症の状態が悪いほど、健康上の問題が生じるリスクは母子ともに高くなり、妊娠中に胎児が死亡するリスクも高くなります。定期的に輸血を受けることで鎌状赤血球クリーゼは起こりにくくなりますが、同時に、輸血された血液に拒絶反応を起こす可能性が高くなります。拒絶反応が起きた状態を同種免疫といい、生命を脅かすことがあります。また妊婦に輸血をしても、胎児の健康上のリスクの低下にはつながりません。
腎臓の病気
もともと重い腎臓の病気がある人は、妊娠中に問題が生じる可能性が高くなります。妊娠中は腎機能が急速に悪化することがあるからです。腎臓の病気は高血圧を伴うことも多く、高血圧の悪化から妊娠中毒症(子癇前症ともいい、妊娠中に生じる高血圧の1種)を起こすことがあります。胎児が在胎週数の割に大きくならなかったり、死産することもあります。腎疾患のある女性が妊娠した場合は、腎機能や血圧、胎児の発育の経過を注意深く観察します。多くの場合、早期の分娩が必要となります。
腎移植を受けた女性でも通常、移植から2年以上経過していて、腎機能が正常で拒絶反応を起こしたことがなく、血圧も正常なら、健康な子供を安全に産むことができます。腎疾患のため定期的に透析を受けている女性も、多くは健康な子供を産むことができます。
けいれん性の病気
けいれん性の病気があるため抗けいれん薬を服用している女性では普通、妊娠中もけいれんの頻度は変わりません。ただし、妊娠中に抗けいれん薬の増量が必要となることもあります。
抗けいれん薬を服用していると、先天異常が生じるリスクが高くなります。したがって、できれば妊娠前に専門医と先天異常のリスクについて話し合っておくようにします。抗けいれん薬の服用を安全に中止できる場合もありますが、ほとんどの人では妊娠中も服用を続ける必要があります。抗けいれん薬の服用を中止するとけいれんの頻度が増えて胎児や母体に障害を及ぼすリスクがあり、このリスクは多くの場合、服用を続けるリスクを上回るからです。
性感染症
性感染症があると妊娠中に問題が起こることがあります。たとえばクラミジア感染症は早産や早期破水の原因になります。また、出産時に新生児に感染して結膜炎を起こすことがあります。淋菌も同様に新生児結膜炎の原因となります。梅毒は胎盤を通じて胎児に感染することがあり、さまざまな先天異常の原因となります。
エイズの原因であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染していて治療を受けていない妊婦では、およそ4分の1が母子感染を起こします。専門家は、HIVに感染している女性は妊娠中に抗レトロウイルス薬を服用することを勧めています。薬の服用により胎児へのHIV感染のリスクは2%未満に減少します。計画的に帝王切開で出産することにより、胎児へのHIV感染リスクをさらに低下させられる場合もあります。妊娠によって母体のHIV感染症の進行が早くなるという報告はありません。
陰部ヘルペスは、経腟分娩(けいちつぶんべん)の際に胎児に感染します。ヘルペスに感染した胎児は、ヘルペス脳炎という生命にかかわる脳の感染症を起こすことがあります。妊娠後期に陰部にヘルペス潰瘍(かいよう)ができた場合は、分娩に伴う胎児への感染(産道感染)を防ぐために、帝王切開で出産することを勧められます。潰瘍ができていなければ、産道感染のリスクはごくわずかです。
糖尿病
糖尿病のある女性が妊娠した場合、妊娠中に合併症を起こすリスクは、糖尿病にかかっている期間や、高血圧や腎臓障害といった糖尿病合併症の有無によって異なります。なお、妊娠中に糖尿病を発症する人もあり、これは妊娠糖尿病と呼ばれています。
血糖値を適切にコントロールすることにより、妊娠中に合併症を起こすリスクを下げることができます。妊娠中は常に、できる限り正常に近い血糖値を維持する必要があります。このため食事療法、運動療法、インスリン療法などを妊娠前から開始します。血糖値は1日数回自己測定するよう指導されます。糖尿病のコントロールは特に妊娠後期では重要です。この時期には母体のインスリンに対する反応性が低下し、血糖値が上昇しやすくなるからです。多くの場合、高用量のインスリンが必要となります。
妊娠のごく初期に血糖値が適切にコントロールされていないと、早期の流産や重大な先天異常のリスクが高くなります。妊娠後期に血糖値が適切にコントロールされていないと、胎児が大きくなり、死産のリスクが高くなります。大きな胎児は産道の通過が困難な場合が多く、腟からの分娩中に傷を受けやすくなります。これを避けるために帝王切開がよく行われます。妊娠中毒症(子癇前症ともいい、妊娠中に生じる高血圧の1種)を起こすリスクも高くなります。
胎児の肺の発達が遅れる傾向もみられます。胎児が大きくなるなど、早期の分娩を検討する必要が生じた場合は、羊水穿刺を行い、少量の羊水を採取して検査することがあります。これによって胎児の肺の成熟度を調べ、早期に分娩を行っても外界で呼吸ができるかどうかを判断します。
糖尿病の母親から生まれた新生児は、低血糖、低カルシウム血症、高ビリルビン血症を起こすリスクが高くなります。このため血液検査を行い、新生児にこれらの症状が現れた場合に備えて注意深く経過を観察します。
母親のインスリン注射の必要量は、出産直後に急激に減少し、約1週間で妊娠前の水準に戻ります。
肝臓や胆嚢の病気
慢性ウイルス性肝炎または肝硬変(肝臓の重度の線維化)がある女性では、流産や早産が起こりやすくなります。肝硬変があると食道の付近に静脈瘤(じょうみゃくりゅう)ができることがあります。妊娠中、特に妊娠後期の3カ月間には、この静脈瘤が破裂して大出血を起こすリスクがわずかですが高まります。
胆石がある場合は注意深く経過を観察します。胆石が胆嚢の出口などを閉塞させたり感染を起こした場合は、手術が必要になることがあります。この手術が母体や胎児に危険を及ぼすことはまずありません。
喘息
喘息(ぜんそく)のある女性が妊娠した場合、約半数の人では妊娠中の喘息発作の頻度や重症度は妊娠前と変わりません。約4分の1の人は妊娠中に喘息が軽減し、残り4分の1の人は悪化します。重度の喘息がありプレドニゾロンによる治療を受けている妊婦は、胎児の発育不良や早産のリスクが高くなります。
妊娠中は喘息の症状が変化することがあるため、ピークフローメーターという器具で自分の呼吸の状態を普段よりこまめに確認するように医師から指示されます。喘息のある妊婦は定期的に医師の診察を受け、必要に応じて治療を調整できるようにします。喘息がうまくコントロールされた状態を保つことが大切です。治療が適切でないと重大な問題が生じる可能性があります。クロモリン、気管支拡張薬(アルブテロールなど)、コルチコステロイド薬(ベクロメタゾンなど)といった治療薬は妊娠中でも服用できます。これらの薬は多くの場合、内服ではなく吸入により投与されます。吸入した薬は主に肺に作用するため、全身や胎児への影響は少なくてすみます。アミノフィリン(内服または静脈注射)とテオフィリン(内服)も妊娠中に使用されることがあります。ステロイド薬は他の治療法で効果が得られなかった場合に限り内服薬として投与されます。インフルエンザの流行期に予防接種を受けることは、喘息のある人が妊娠した場合には特に重要です。
自己免疫疾患
自己免疫疾患がある人では、体内でつくられる異常な抗体が胎盤を通過して胎児に問題を起こすことがあります。妊娠による影響は自己免疫疾患の種類により異なります。
全身性エリテマトーデスは妊娠中に初めて発症することもあれば、妊娠中に悪化したり、あるいは軽快することもあります。この病気が妊娠中どのように経過するかは予測できませんが、出産直後に症状が再燃することがよくあります。
全身性エリテマトーデスを発症する女性にはしばしば、過去に習慣性流産(流産を繰り返すこと)、胎児の発育不良、早産の経験がみられます。腎障害や高血圧など、全身性エリテマトーデスの合併症があると、胎児や新生児が死亡するリスクが高くなります。
全身性エリテマトーデスにより生じた抗体が、母体から胎盤を通って胎児に及ぶことがあります。その結果、胎児に心拍数の低下、貧血、血小板減少、白血球減少などが生じることがあります。ただし、この抗体は出生後の数週間で徐々に消失し、心拍数低下以外の症状は解消されます。
グレーヴス病(バセドウ病)では、抗体が甲状腺を刺激するため甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。この抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺も刺激し、胎児の心拍数上昇や発育不良の原因となります。また、胎児の甲状腺が肥大して甲状腺腫になることがあります。きわめてまれですが甲状腺腫が大きくなって経腟分娩が困難になる場合もあります。
グレーヴス病の女性には通常、効果が得られる最低用量のプロピルチオウラシルが投与されます。プロピルチオウラシルは甲状腺の活動を抑える薬ですが、胎盤を通過するため、胎児の甲状腺ホルモン産生が不十分になることがあります。これを防ぐため診察と甲状腺ホルモンの測定を定期的に行います。グレーヴス病は妊娠後期(25週以降)に入ると軽快することが多いため、プロピルチオウラシルの量を減らすか、服用を中止できる場合もあります。必要であれば妊婦の甲状腺を妊娠中期(13〜24週)に切除することもあります。この手術を行った場合は24時間後から甲状腺ホルモンの服用を開始する必要があります。このホルモン剤を服用しても胎児に悪影響はありません。
重症筋無力症は筋力が低下する病気で、妊娠中に重大な、あるいは永続的な合併症を起こすことは普通ありません。ごくまれに分娩中に呼吸の補助(補助換気)が必要になることがあります。この病気の原因となる抗体は胎盤を通過します。このため、母親に重症筋無力症があると、新生児のおよそ5分の1は同じ病気をもって生まれてきます。しかし多くの場合には、新生児の筋力低下は一時的なものです。母体から移行した抗体は徐々に消失し、子供自身はこの抗体を産生しないからです。
特発性血小板減少性紫斑病があると、母子ともに出血が問題になることがあります。妊娠中に適切な治療を受けずにいると、より重症になる傾向があります。ステロイド薬(プレドニゾロンの内服薬など)は母体の血小板を増加させて血液凝固を改善しますが、プレドニゾロンは胎児の発育不良や早産のリスクを高めます。出産直前には高用量のガンマグロブリンを静脈注射することがあります。この治療は一時的に血小板を増加させて血液凝固を改善するため、制御不能な大出血を起こすことなく安全に経腟分娩することが可能となります。帝王切開が必要となる場合と、血小板が少なく出産時に大出血が予想される場合に限って、血小板を輸血します。まれに、治療をしても血小板が増えず危険な状態にある場合は、古い血球や血小板を捕らえて破壊する働きを行っている脾臓(ひぞう)を摘出することもあります。この手術は妊娠中期(13〜24週)に行うのが最適です。
この病気を起こす抗血小板抗体は胎盤を通過して胎児に移行することがあり、まれに出生前や出生直後に胎児の血小板数が低下して危険な状態になることがあります。このような胎児は分娩中に出血による障害を起こしたり死亡することがあり、特に脳に出血が起きた場合は危険です。母体から移行した抗体は出生後数週間で消失し、新生児の血液凝固機能は正常に戻ります。
関節リウマチの女性が妊娠しても胎児に悪影響を及ぼすことはありませんが、股関節(こかんせつ)や腰椎にリウマチによる障害があると出産が困難になります。関節リウマチの症状は妊娠中に軽減することがありますが、普通は出産後に元の症状に戻ります。
子宮筋腫
子宮筋腫は比較的よくみられる良性の腫瘍(しゅよう)ですが、筋腫がある女性では早産、胎位異常(胎児の位置や向きの異常)、前置胎盤(胎盤の位置の異常)、習慣性流産などのリスクが高くなることがあります。まれに、分娩時に子宮筋腫によって胎児の通過が障害されることがあります。
癌(がん)は生命にかかわる病気であり、治療の開始時期が遅れるとそれだけ治癒の可能性も低くなるため、普通は妊娠の有無にかかわらず治療が行われます。手術、化学療法、放射線療法といった一般的な癌の治療法は胎児に危険となることがあり、そのため中絶を余儀なくされるケースもあります。しかし、胎児へのリスクが小さくなるように治療時期を調整できることもあります。

稽留流産患者の質問

稽留流産患者AS様

[ 症状、ご相談内容 ] :
はじめまして。
現在私は2人目希望妊娠希望者1児の母38歳ですが、2度流産をしてしまいました。 渓流流産だったため、内容物を出す手術を2度したのですが、 超音波でも子宮内は綺麗だったのですが生理が復活してこなく、 血液検査の結果まだ内容物が取り切れてなかったようで再手術といわれました。 とりあえずプラノバールを飲んで生理を起こして内容物が流れれば手術は逃れられるので 現在お薬で挑戦中でダメなら再手術です。
ネットで色々検索して、自転車に乗って運動したり、 お灸で血の道を整えてもらったら自然に内容物が出て、 子宮内がきれいになり手術をまぬがれたという記事を見ました。 そういう事が本当に出来るのでしょうか?
出来るなら針でもお灸でもやりたいと思ってます。 ご教授願います。

当院の返事:
当院の鍼灸治療は稽留流産には、かなり 有効です。最近、一人稽留流産患者が、当院で暫く鍼灸治療を受け、 内容物が綺麗になくなりました。
今の症状は、鍼灸治療の方が効果的だと思います。 当院が開発した特殊な治療法で、手術なくて、自然に治った方がたくさん いらっしゃいますので、心配ないと思います。
 

患者様の返信:
先生のお陰様で、先月末男の子が生まれました。 大変嬉しく思っております。
鍼治療で治るとは思っていませんでした。本当にありがとうございました。

低置胎盤患者A様

[ 症状、ご相談内容 ] :
現在妊娠27週で、先日病院の検診で低置胎盤でこのままだと転院して帝王切開だといわれました。 帰宅後にネットで原因を調べたら思い当たるのは冷えでした。 手足は暖かいのですが、太ももとおしりは冷たい気がします。 お灸で低置胎盤に効果があると拝見したのですが、27週でも治りますか? また、お医者さんからは普段通りの生活をと指示されているので仕事を続けているのですが通いの場合、週に何回くらい通えばいいでしょうか ?また、一回の金額も教えていただけたら助かります。
 

プロラクチンの高い患者A様

[ 症状、ご相談内容 ] :
昨年6月から、婦人科に行って、検査してもらったところ、プロラクチンが高いと判断されて、テルグリドと当帰芍薬散を処方されて、今はこの二種類の薬を飲み続けている 昨年9月卵管検査時に、子宮内がくっ付いていたが、風船のような装置で開いてくれたとのこと。ここで子宮は正常にもどった。 卵管が左右正常で通ってる。 昨年10月に子宮鏡検査で子宮口狭い、中は滑らか異常なしが、子宮の壁の厚みが薄い。 フーナーテストも異常なし。 昨年11月からタイミング法で、HCGが一回のみ注射されて、基礎体温が上がらなくて、妊娠にならず、生理がきた 昨年12月の二回目のタイミング法で、三回注射されて、基礎体温は11月よりあがってたが、長く続かなったから、下がって生理がきた。ただし、生理はいつもより3日も遅れたので、生理周期26日目に、妊娠検査のキットで、薄らと陽性のマークがでていたけど、その後生理がきた。 どうぞよろしくお願いいたします。
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