交感性眼炎
交感性眼炎は片眼の穿孔性眼外傷,または内眼手術を契機として発症する両眼性汎ぶどう膜炎です。
受傷眼を「起交感眼」、他眼を「被交感眼」といいます。交感性眼炎記載はヒポクラテスの時代からありますが,文献としては1830年のマッケンズィの記載が最初です。この原著には「外傷性眼症」として「一眼の外傷後,非受傷眼に交感性に重篤な眼炎症が起こることがある」との記載があり、1835年の同書第2版ではより詳細な病像が記載されています。
その後19〜20世紀にかけて,戦争の規模拡大に伴って眼外傷が急増しました。特に1854〜56年にかけて黒海沿岸のクリミア半島,バルカン半島,バルト海を舞台にフランス帝国・大英帝国・オスマントルコ帝国・サルディーニア王国の4か国同盟軍と,ロシア帝国・ブルガリア義勇軍とが激しく戦ったクリミア戦争は,多数の交感性眼炎患者が出た最初の戦争です。日本ではちょうどアメリカのペリー提督,続いてロシアのプチャーチン提督が江戸幕府に開国を要求していた時期です。そのロシア艦隊はフィリピン・マニラ沖でフランス艦隊と遭遇,さらにイギリス艦隊が後を追って長崎に迫る緊迫した状況下で江戸幕府は日米,日露和親条約を締結しており,この戦争は幕末のわが国にも大きな政治的影響を与えました。交感性眼炎の発症にはHLA-DR4(HLA-DRB1*0405)遺伝子が関与していると考えられていますが,地中海のサルディーニア島出身者にはHLA-DR4保有者が多く,サルディーニア王国の参戦もこの戦争で多数の発症者が出た一因である可能性があります。
交感性眼炎鍼灸治療 :交感性眼炎患者44名、【眼底透穴針】治療法:新明、翳明、太陽、晴明、翳風、養老、合穀、光明、足三里、大椎、合穀、曲池、三陰交、陽陵泉。
交感性眼炎鍼灸臨床経験 :中国鍼灸院では、多くの交感性眼炎患者の症状を回復、或いは改善してきました。今も多くの交感性眼炎患者が通っていらっしゃいます。交感性眼炎患者の一人一人の症状に合わせて、中国鍼灸院はきめ細かく具体的な針灸治療方法で対応しています。今までの交感性眼炎針灸治療では、交感性眼炎患者の生活の質と予後は比較的良好です。多くの交感性眼炎患者の視力と視野障害の回復が可能になりました。
交感性眼炎の早期治療がとても大事です。早い段階の鍼灸治療では、かなり満足できる効果が得られます。全身の免疫異常ですので、全身治療が必要です。
矢田様、27歳、男性。
1年前、交通事故で、左目がぶどう膜炎を起こし、2ヶ月を経て、反対側の健康な目に交感性眼炎と同じ症状が出ました。
病院で交感性眼炎と診断され、パルス療法が行われましたが、重度の視力低下が残りました。
1か月中国鍼灸院の鍼灸治療を受けた後、ぶどう膜炎が治って両目の視力が0.1から1.0に回復しました。2ヶ月後の眼底検査は、両目が健常に戻りました。
失明になるかと心配していましたが、視力が回復できて、心から感謝しております。ありがとうございました。 (以上御本人様の承諾をいただいて掲載いたしました。)
当院が独自開発した【眼底透穴針】治療法:
眼球の奥にある特殊なツポに一本の針を通し、微弱電流で刺激し、電気信号は網膜にある視細胞のところで、電気エネルギーに変えて、網膜、視神経など眼球組織を活発化させます。
更に電気エネルギー信号は視神経を伝わり、後頭葉にある皮質視中枢に達し、視中枢の働きを活性化する仕組みです。
交感性眼炎治療の実際様子と流れ
1.当院が独自開発した【眼底透穴針】
特殊なツボにハリをうちます。
2.ハリに微弱電流を流します。
3.痛みを感じない程度の治療が多いので、
寝ってしまうことがあります。
4.起きたら、治療完了です。
5.鍼灸治療が終わった後に生活注意事項を説明します。
色素細胞が、外傷をきっかけに免疫系にさらされることにより、色素に富んだぶどう膜に対する自己免疫反応が起こると考えられています。色素細胞に対する自己免疫反応という意味では、交感性眼炎と同じ病態であり、経過も似ていますが、外傷がきっかけになる点で交感性眼炎と区別されます。
交感性眼炎の場合、最初に片眼に眼内に達する穿孔性外傷があり、それから2週間から数カ月後に両眼に強いぶどう膜炎を起こします。外傷があったということを除けば、臨床症状は交感性眼炎とまったく同じです。交感性眼炎原因は不明ですが、外傷によって傷ついたぶどう膜の色素細胞に対して抗原抗体反応が起こり、それが全身の色素細胞に対する抗原抗体反応、いい換えると自分のからだの一部である色素細胞を攻撃して発症してしまう病気です。交感性眼炎は一種の自己免疫疾患と考えられます。
交感性眼炎治療は交感性眼炎と同じですが、再発をくり返すことが多く、治療はむずかしい例が多いので、初期の治療が大切です。もし片方の目に穿孔性外傷を受けた場合、外傷を受けた目の治療はもちろんのこと片方のよい目まで交感性眼炎が起こるかどうか十分に注意する必要があります。
交感性眼炎は主に、外傷後1〜2カ月してから起こってくることが多く、重度の視力低下を引起こしたり、視力障害を残すこともあります。さらに外傷を受けた目の治療はもちろんのこと、症状としては、眼精疲労などからはじまり、めまい、頭痛、嘔吐など全身症状も現われ、近視症状が起きて,炎症部位によっては高度の視力障害を残します。昔は交感性眼炎を起こす恐れがあると判断された時には、外傷を受けた目を摘出して片方のよい目を守っていました。近年では、鍼灸、抗生物質や副腎皮質ホルモンなどを使用することで、交感性眼炎を起こすことが少なくなっています。しかし、医療が発達したからといっても現在でも全くなくなったという訳ではなく、危険な場合には外傷眼を摘出することがあります。
交感性眼炎の西洋医学治療はステロイド薬の大量点滴あるいはパルス療法が行われます。免疫抑制薬が使われる場合もあります。穿孔性(せんこうせい)の眼の外傷を受けた人で、遺伝的素因がある場合(HLA―DR4、DR53など)には、十分な経過観察が必要です。受傷した眼の視機能の回復がまったく期待できない場合には、本症の発症を予防するために、受傷した眼球を摘出することもあります。