硝子体出血
硝子体出血は、目のさまざまな部位からの出血が、硝子体腔のなかにたまった状態です。
硝子体出血の出血自体は、短期で止まることがほとんどですが、硝子体はゼリー状のどろっとした組織なので、このなかに出血がとどまると、吸収には2〜3カ月かかるのが普通です。硝子体は本来、血管のない透明な組織ですが、光が出血によってさえぎられて網膜にうまく届かなくなるので、飛蚊症(ひぶんしょう)・霧視(むし)・視力低下などを起こします。
硝子体出血の原因はさまざまです。最も多いのは、網膜新生血管(もうまくしんせいけっかん)の破綻による出血です。糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)・網膜静脈閉塞(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)などの、網膜の血液のめぐりが悪くなる病気では、網膜の栄養を補おうとしていろいろな場所に新生血管ができてきます。これらは、本来の血管と異なって破れやすく、硝子体の引っ張りによって容易に出血を起こします。また、こうした新生血管がある部位では、硝子体と網膜の癒着も強いことが多く、硝子体の引っ張りによって網膜に破れをつくり、網膜剥離が起こることもあります。出血の原因としては、いろいろな原因があります。糖尿病や高血圧などの基礎疾患が存在し、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞(血栓)症などの眼底出血に引き続き硝子体出血を生じます。網膜裂孔を生じたときに、孔のところにたまたま血管が存在すると、その血管が破れて出血を起こし、硝子体出血を生じます。また、後部硝子体剥離のときにも起こすことがあります。さらに、加齢性黄斑変性症、近視性黄斑出血などでも起る場合があります。
中国鍼灸院の硝子体出血の治療目的は、硝子体出血の回復程度を高めることと硝子体出血が完治するまでの時間の短縮することです。
多くの西洋医学治療で回復できない硝子体出血患者さんの期待に応えるため、当院が25年間、硝子体出血の治療に力を入れて、臨床経験を重ねた結果、独自な電気ハリを考案いたしました。そして良い成果を上げています。
治癒した例、改善した例を合わせると患者の90%は経過がよいと考えられます。
硝子体出血の原因が多様なため、当院の治療方法もそれに応じて、多様に渡って行います。当院は中医学的な弁証論治の基本を元に、特殊な電気ハリで、最大限の効果を引き出しています。硝子体出血の視力回復は患者さんの生活の質を向上させるのに役に立っています。
硝子体出血の鍼灸治療症例 :硝子体出血330名、取穴:晴明、攅竹、太陽、翳明、糸竹空、三間、合穀、血海、足三里、光明、太沖。電気針。
硝子体出血の鍼灸臨床経験 :当院では、多くの硝子体出血患者の症状を回復、或いは改善してきました。今も多くの硝子体出血患者が通っていらっしゃいます。硝子体出血患者の一人一人の症状に合わせて、当院はきめ細かく具体的な針灸治療方法で対応しています。今までの硝子体出血針灸治療では、硝子体出血患者の生活の質と予後は比較的良好です。多くの硝子体出血患者の視力と視野障害の回復が可能になりました。
当院の針灸治療では硝子体出血の吸収回復を早めることができます。比較的に早い段階で、当院の治療を受けた硝子体出血患者の多くは2−3週間で出血が吸収されます。硝子体出血の原因疾患によっては、治療が遅れると新生血管硝子体出血などを引き起こして、失明に至る危険性もあります。全身疾患を背景とする場合も多いので、その治療も並行して行うことが必要です。
当院が独自開発した【眼底透穴針】治療法:
眼球の奥にある特殊なツポに一本の針を通し、微弱電流で刺激し、電気信号は網膜にある視細胞のところで、電気エネルギーに変えて、硝子体の出血を吸収させます。
更に電気エネルギー信号は視神経を伝わり、後頭葉にある皮質視中枢に達し、視中枢の働きを活性化する仕組みです。
硝子体出血治療の実際様子と流れ
1.当院が独自開発した【眼底透穴針】
特殊なツボにハリをうちます。
2.ハリに微弱電流を流します。
3.痛みを感じない程度の治療が多いので、
寝ってしまうことがあります。
4.起きたら、治療完了です。
5.鍼灸治療が終わった後に生活注意事項を説明します。
網膜は大変薄い組織なため、網膜内の動脈と静脈が交叉している部分では、血管の外膜(血管壁の一番外側)を共有しています。このため、交叉部分の動脈に動脈硬化が起きていると、静脈もその影響を受けて、血管内径が狭くなったり血液の流れがよどんだりして、血栓(血液が血管の中で凝固して血流を塞ぐこと)が形成されます。網膜静脈分枝閉塞症は主に、この交叉部の血栓によって、血流が途絶えることで発病します。閉塞した部分より末梢側の血管から、行き場を失った血液があふれ出して、眼底出血や網膜浮腫を起こします。出血している部分は、瞳孔から入ってくる光が網膜まで届かないため、その部分の視野が遮られます(耳側の眼底が出血していれば鼻側の視野が欠けます)。
眼底の出血自体は、ゆっくりと時間をかけ引いていきます。出血が引いた後、最終的にどの程度視力が回復するかは、視力にとって一番大切な、黄斑の障害の程度によって異なります。網膜浮腫が黄斑に及ぶ黄斑浮腫が高度であれば、視力は回復しづらくなります。とくに浮腫が強いと、嚢胞様黄斑浮腫に進行して、重度の視力障害が残ってしまいます。また、場合によっては、閉塞部位から末梢側の毛細血管は破綻し消失してしまいますので、閉塞した血管が黄斑の血流を司る静脈だった場合、黄斑の血流が再開せず、視細胞の機能は低下したままで、視力が回復しません。一般に症状は、閉塞部位が乳頭に近いほど重く、逆に末端の静脈が詰まって出血が狭い範囲に限られていれば、全く気付かないこともあります。
枝分かれしている網膜静脈は、視神経乳頭で1本にまとまって網膜中心静脈となり、篩状板という網目のような膜を通過して、眼球の外へと出ていきます。網膜中心静脈は、網膜中心動脈と接しているために、やはり動脈硬化の影響を受けます。血圧の急激な変動がきっかけとなったり、あるいは血管そのものの炎症によって静脈の根元が閉塞してしまうのが、網膜中心静脈閉塞症です。根元の静脈が詰まるのですから、影響は網膜全体に及びます。眼底一面に出血や浮腫が広がり、当然黄斑にも出血や浮腫が強く起きますので、視力が障害されます。
出血は時間とともに引いていきますが、嚢胞様黄斑浮腫に進行したり、毛細血管が消失して血流が再開せずに、網膜の機能が奪われたままで、視力が回復しないことも少なくありません。さらに、血流が途絶えたところに新生血管(本来は存在しない新しくできた血管)が伸びてきて、このあと解説する慢性期の合併症を起こす、大きな原因を作ってしまいます。なお、網膜静脈閉塞症のうち、8割以上は静脈分枝閉塞症で、中心静脈が閉塞するのは確率的には低いといえます。 網膜静脈閉塞症では、発症時の眼底出血や網膜浮腫が視覚に影響を及ぼすほか、発症後3カ月から1年以上も経ち、症状が落ち着いた慢性期になってから、硝子体出血のような合併症が起きてきます。
閉塞部位から末梢側の毛細血管が破綻し消失すると、そこは無血管野(血管の存在しない部分)となります。無血管野の細胞は、血管の新生を促す物質(サイトカイン)を放出し、それによって新生血管が発生します。新生血管は、硝子体(網膜の内側に位置し、眼球内部の大部分を占める、卵の白身のような無色透明の組織)を足掛かりにして伸びてきてます。新生血管の血管壁は、大変もろくて破れやすいために、容易に出血が起こります。新生血管からの出血が硝子体内に広がると、硝子体が濁って物が見えなくなります。新生血管は、網膜無血管野が広いほど発生頻度が高くなります。
網膜静脈閉塞症は高齢者に多い病気ですが、若い人に発症することが全くないわけではありません。若年者に起きる場合、静脈分枝閉塞より中心静脈閉塞が多いという特徴があります。血栓により閉塞するケースは少なく、血管自体の炎症や全身の病気(全身性エリテマトーデスなど)が主な原因です。高齢者に起きる中心静脈閉塞が、血管が完全に閉塞してしまうことが多いのに比べ、若年者の場合、通常は完全には閉塞せず、いくらか血流が保たれています。このため、中心静脈閉塞の割に予後は良いといえます。
後部硝子体剥離が起こる時にも、硝子体出血を起こすことがあります。この時の出血には、網膜に破れをつくり、その部位にある網膜血管が断裂して起こるものと、網膜の破れを伴わないものの2種類があります。網膜細動脈瘤(もうまくさいどうみゃくりゅう)などによる網膜の下の大量出血や、くも膜下出血が硝子体腔に回って硝子体出血になることもあります。硝子体出血の原因はさまざまで、こじらせると失明の危険もあるため、すみやかに受診、治療することが必要です。
硝子体出血が大量の時は、通常の眼底検査をしても、出血にはばまれて、眼のなかの状況が明らかでないことが多く、原因の特定や網膜剥離を併発しているかどうかの判定が困難であることが多いのです。そこで、超音波断層検査や光刺激による網膜の電気的な反応を検査して網膜の状態を調べたり、全身検査を行って糖尿病・高血圧・血液疾患などの有無を調べます。また、出血を起こしていないほうの眼の状態も参考になります。硝子体出血の量が多いと、眼底の詳細が分からないことが多く、超音波などの特殊な検査が必要になります。
硝子体出血は全身疾患を原因とする場合も多いので、硝子体出血を起こしている原因疾患、その治療状況、網膜剥離の有無などによって、治療方針が変わってきます。
網膜剥離が疑わしい場合や、糖尿病網膜症でレーザー治療が不十分な場合などは、できるだけ早く硝子体手術を行って、硝子体出血を取り除き、網膜剥離を元の状態に戻す手術を併用したり、糖尿病網膜症に対するレーザー治療などを徹底的に行うことが必要です。原因疾患によっては、治療が遅れると新生血管緑内障などを引き起こして、失明に至る危険性もあります。